
株式会社ちぃ農あわじ|兵庫県南あわじ市/淡路市|自然農法による米づくりと参加型の田んぼプロジェクト
食べること、作ることの距離を縮める
一杯のごはんが食卓に届くまでには、田植えや稲刈りだけでなく、水の管理、草取り、生育の見守りなど、季節を通じた仕事がある。しかし、農業に関わったことのない人にとって、その過程は見えにくい。
だからこそ、農との関わり方は「農家になる」か「消費者になる」かの二択でなくてもよいのかもしれない。自分の手で苗を植え、稲の成長を見守り、秋に収穫する。暮らしのなかに農との小さな接点をつくることは、食べることと、つくることの距離を縮める一歩になる。
兵庫県南あわじ市の株式会社ちぃ農あわじは、その入口を「ちょっとだけ」から設計する会社だ。化学肥料や農薬を使わない自然農法による米づくりを軸に、個人、企業、子どもたちが田んぼに関われる複数のプロジェクトを展開している。
「ちょっとだけ」から始まる、参加型の米づくり
「ちぃ農」という名前には、関西弁の「ちぃとだけ」、つまり「ちょっとだけ農に触れる」という意味が込められている。同社が目指すのは、農業のすべてを一人で背負わせることではない。誰もができる範囲で田んぼに関わり、その積み重ねで農地を守る仕組みだ。
米づくりをゼロから始めるには、土地や農機具だけでなく、水を使うための地域との関係、収穫後の乾燥や籾すりなど、多くの準備が必要になる。個人向けの「ちぃ農マイ田んぼプロジェクト」は、こうした最初の負担を参加者一人に集中させない。
日々の基本管理は運営側が担い、参加者は田植え、草取り・生育観察、稲刈り、天日干しなどに関わる。農地や機械を一から用意しなくても、米づくりの一連の工程を学び、自分が食べるものが育つ時間に参加できる仕組みである。。
農作業への参加が難しい人に向けては、活動を継続的に支える「ちぃ農サポーター」が用意されている。現在は4コースがあり、コースに応じて新米や田植え・収穫体験などの特典を受けられる。
参加・支援方法
主な内容
ちぃ農マイ田んぼ
田植え、草取り・生育観察、稲刈り、天日干しなどに参加。収穫米は作業工数に応じて分配
芽生えサポーター
活動を継続的に支援
実りサポーター
新米5kgなどの特典
豊穣サポーター
新米10kg、田植え体験などの特典
パートナーサポーター
新米15kg、田植え・収穫体験などの特典

パソコンの仕事の先に見えた、耕作放棄地
代表取締役の田中優介氏は、農に関心を持つ以前、経理アウトソーシングとDXに関わる会社を経営していた。現在は、ちぃ農あわじで経営全般を統括し、経理・財務のDX化も推進している。
転機の一つになったのは、奄美大島で見聞きしたサトウキビ畑の耕作放棄地だった。公開インタビューで、田中氏は現地の話をこう振り返っている。
「儲からないし、作っている人も高齢の方ばかりで、土地をどうしたらいいか困っているという話を聞きました」——田中優介氏
暑さの厳しい地域では農作業を朝夕に行い、昼間は在宅で仕事をすることもできる。その実情に触れた田中氏は、農業か会社勤めかを二者択一にせず、在宅の仕事と農を組み合わせる兼業のあり方を考えるようになったという。
淡路島で農の現場に入った後には、野菜を作ることも、機械を直すこともできない自分に直面した。パソコンや経営の知識があっても、食べるものを自ら生み出す力がない。その実感を、田中氏は「『生きる力を持ってないな』って思ったんです」と表現している。
仕事を捨てて農に入るのではなく、今ある仕事や暮らしを続けながら、できる範囲で農に参加する。その選択肢を形にしたものが、ちぃ農あわじの「ちょっとだけ農」なのである。
「水を入れてきた」が、地域を守る声になる
参加型だからといって、米を受け取るだけの関係ではない。参加者は、田植えや稲刈りといった節目の作業だけでなく、稲の生育を見守り、必要に応じて草取りや水管理にも関わっていく。
水路の維持は、田んぼ一枚の内部だけで完結しない。地域の担い手と費用の分担によって成り立つため、関わる人が減るほど、一人当たりの負担は重くなる。田中氏は、農地を守るためには人数が必要だと語る。
「人数がいればできることは結構ある。みんなでそこのエリアを守っていく、整備していくっていう形で地域づくりはやっていかないと」——田中優介氏
運営側が米づくりの土台を整え、参加者が学びながら田んぼの変化に気づき、必要な時に動く。その関係が増えることは、収穫量だけでなく、水を通し、あぜを保ち、次の作付けができる状態を地域に残す力になる。
米を介して、企業・子ども・地域をつなぐ
企業向けの「ちぃ農法人田んぼプロジェクト」は、1反、約1,000平方メートル単位で田んぼを運営するプログラムだ。座学、農作業体験、しめ縄づくりなどを通じて、社員研修、福利厚生、食料備蓄、家族参加の機会として活用できる。
「みらい給食田んぼプロジェクト」では、企業が法人田んぼを3反以上契約すると、そのうち1反分の米を地域の保育園、幼稚園、小学校の給食用として提供する仕組みを掲げる。複数社で合計3反を確保する場合も、給食用の1反を確保できるとしている。
公式Instagramでは、地域の園児が田んぼに入り、生き物を観察する会が行われた様子も発信されている。 田んぼを生産の場所だけでなく、子どもたちが季節や生き物に触れ、食べ物が育つ過程を知る場へひらく取り組みである。
企業が田んぼを支え、社員や家族が農に触れ、その一部が子どもたちの食や学びにつながる。ちぃ農あわじは、米を介して企業と地域、そして次の世代を結ぶ循環をつくろうとしている。

農を、遠い誰かの仕事にしない
ちぃ農あわじがつくろうとしているのは、農業を特別な人だけの仕事にしない仕組みだ。
田植えに参加する人。田んぼを支える企業。活動を応援するサポーター。その米を食べる子どもたち。それぞれが異なる立場から一つの田んぼに関わることで、農地を守る力が生まれていく。
ZIPANG DAOは、「もったいない日本を、世界の宝に。志ある事業者を、みんなで応援するDAO。」を掲げている。 ちぃ農あわじが向き合うのは、農地や農の知恵が、関わる人の不足によって失われていくという「もったいない」である。
一杯の米を、「みんなの田んぼ」から。
ちぃ農あわじが淡路島で育てているのは、米だけではない。農を自分ごととして支える人の輪であり、地域の営みを次の世代へつなぐ、新しい参加のかたちである。
参加・支援を検討する方へ
ちぃ農マイ田んぼ、法人田んぼ、みらい給食田んぼ、サポーター制度の詳細と最新の募集状況は、株式会社ちぃ農あわじの公式サイトで確認できる。
会社概要*
会社名
株式会社ちぃ農あわじ
代表取締役
田中 優介
取締役
笹山 慧、内田 洋介
所在地
兵庫県南あわじ市賀集立川瀬30番地3
事業内容
田畑を通じた社会づくり事業、子どもへの食支援事業、日本の地方と海外をつなぐ地方創生事業
主なプロジェクト
ちぃ農マイ田んぼ、ちぃ農法人田んぼ、みらい給食田んぼ、里山暮らし体験、ちぃ農サポーター
