ここっと兵庫が挑む、伝統と文化をSNSでつなぐ架け橋
2026年10月時点でフォロワー総数24万人超。兵庫県のお出かけ・グルメ・イベント・穴場情報を約3年半にわたって発信し続ける「ここっと兵庫」は、ラジオ関西Podcastでの配信や、地域の当事者のアカウントプロデュースにも活動を広げている。地元への愛着は、一歩ずつ足を運ぶたびに深まっていったという。その歩みをありのままに語る姿勢が、発信の強さの源になっている。
ここっと兵庫という人

「ここっと兵庫」は、兵庫県のローカル情報を専門に発信するSNSアカウントであり、その運営者の活動名でもある。2026年10月15日時点で、Instagramのフォロワーは約18万人、TikTokは約6万人。全媒体の合計は24万人を超える。主な活動は自身のアカウントでの情報発信とPR活動に加え、企業・自治体向けのSNSセミナーやコンサルティング。ラジオ関西Podcast「ここっと兵庫のココだけの話」での配信にも取り組んでいる。緑色のズボンと白いシャツ姿の後ろ姿がトレードマークだ。
兵庫へ戻り、SNSでの発信を始める
きっかけは、地元を離れて気づいた、兵庫県の魅力だった。
前職で都内勤務になり、地元を離れたとき、兵庫県のことをもっと自分の言葉で説明できるようになりたいと感じた。外から見ることで、兵庫県の素晴らしさを強く実感したからだ。
そこに重なったのが、コロナ禍で広がったリモートワークだった。東京に勤務しなくても働ける日常が始まり、生活の拠点を東京から兵庫へ移した。当時は副業が広がっていた時代。好きな地元の魅力を発信しながら、収入にもつなげられたら、と考え、SNSでの情報発信を始めた。最初に扱っていたのは、全国のお出かけ・旅行情報だった。
全国の情報から、兵庫県の情報へ

全国の情報を発信するなかで、実際に訪れた場所と、インターネットや人から得た情報をもとに紹介する場所とでは、伝えられる内容の深さが違うと感じるようになった。自分の目で見て、足を運んだ場所だからこそ、現地で感じたことまで含めて、自信を持って編集できる。
自ら足を運べる範囲として兵庫県に目を向けると、まだ知られていない場所や店、人の魅力が数多くあった。自分が訪れた場所だからこそ、見る人にとっても「わざわざ行ってみたい」と思える情報になる。発信を始めて数か月が経つ頃、全国を扱う発信から、兵庫県内を実際に訪れて紹介する発信へと軸を移し、ターゲットも兵庫県民に絞った。「自分で足を運び、自分の言葉で伝えたい」という思いが、その転換を後押しした。
足を運ぶことで、情報の価値を高める
すべて自分で足を運んで確認する。今まで行かなかった場所にも、足を運ぶ機会が生まれる。そして足を運ぶうちに、地域の人々の優しさ、知らなかったことを発見する喜び、見えてきた課題感、いろいろな人やものの魅力が身についていった。
「足を運ぶたびに、地元への愛着が少しずつ育っていきました」
全国の情報を発信していた頃は、他の発信者にお願いして、投稿をリポストで紹介することもあった。当時は投稿ネタを補完できるありがたい方法だった。その後、自分自身が現地で撮影し、編集を重ねるようになり、ひとつの投稿にかかる時間と労力を実感するようになった。同じ立場になって初めて、発信者の努力への理解が深まったという。過去に協力してくれた発信者への感謝は、今も強く残っている。
兵庫県民に向けて届けたいメッセージも明確だ。兵庫の人は地元が好きでも、遊びに行くのは京都や大阪に目が向きやすいという傾向を、自身の経験と観察から感じている。兵庫にも魅力がたくさんあるからこそ、自分の街をみんなに見てもらい、兵庫には兵庫の良さがあるという認知が広がったほうが絶対にいい——それが発信の根底にある動機だ。
「私のアカウントで少しでも皆さんを幸せになれるようなきっかけとなれたら」
続けた先に見えた景色
発信開始から約10か月後の2023年9月頃、Instagramのフォロワーは約2,000人だった。その後、アフレコとブランディングが定着し始めると、まもなく1万人に到達。以降は1か月に約1万人ずつ増え、1万人到達から1年足らずで10万人規模に成長した。
「初期設計が全て」——これがここっと兵庫の発信哲学の核心だ。迷いながら走ると、一つバズってもフォロワーの一時的な増加で終わる。バズり続けるには、違う思想が必要だという。
具体的には、マーケティングと営業力の二軸で考える。マーケティングは、誰にどんな価値を届けるかを設計し、フォローされる理由をつくる役割。ニーズの深掘り、得意分野・興味のある範囲、それを出すタイミングを考え抜くことで、フォローされる理由とベネフィットが伝わる。
営業力は、発信によって生まれた価値を、企業や自治体との仕事や収益につなげる役割。
「インフルエンサーは営業が苦手な人も多い」と話すが、実際には営業力に対価が比例する。だからこそ、発信の力に営業力を掛け合わせることが、フォロワーの数を仕事へと広げる鍵になる。マーケティングで選ばれる理由をつくり、営業力でその価値を仕事につなげる。この二つが掛け合わさって、強いアカウントになる——そう考えている。その二つを支える土台が、継続して発信し、結果に向き合い続ける覚悟だ。
当時、兵庫県のお出かけ情報を発信するアカウントの中でフォロワー数がトップになったことは、自身のアカウントへの責任感が強くなるきっかけになった。顔出しをしていないため、フォロワーと直接出会う機会は多くない。それでも、撮影を依頼してくれた企業の担当者から「個人のアカウントでもフォローしています」と声をかけられることがある。数ある発信者の中から自分を指定してくれたことが嬉しく、だからこそ、期待に応えて結果を出したいという思いが強くなった。
自分の経験を、他者の発信にも活かす
AIも含めて世の中が変わり始めているなか、ここっと兵庫は発信者としての活動をさらに広げている。SNSでの発信を軸にしながら、別の事業の柱を持つことが大事だと考えるようになったからだ。媒体が変われば、積み上げ方も変わる。各媒体で何ができるかを考えるなかで、行き着いたのが音声での発信とアカウントプロデュースだった。
現在取り組んでいるのは、音声での発信と、他の発信者のアカウントプロデュースだ。ラジオ関西Podcast「ここっと兵庫のココだけの話」で発信を続けているほか、漁業関係者のアカウントなど、地域の当事者が持つ経験や物語を届けるアカウントのプロデュースにも取り組んでいる。2026年10月時点で、プロデュースしているアカウントには、1投稿で386万回再生に達した動画もある。
プロデューサーとしての力を発揮できる人が残ると考えており、他人を勝たせるために自分の活動の幅を、優先順位をつけながら広げていくと話す。自分のアカウントで積み重ねた経験を、他の人の活動を届けるためにも活かしていく。発信者としての現在地は、そこへ向かう途中にある。
地方に眠る良いものを、日本中へ
ここからは、これから取り組みたい構想だ。
兵庫県をはじめ、全国各地には、酒やマッチ、器など、長年受け継がれてきた伝統文化や、地域で何十年も事業を続けてきた事業者がいる。商品自体は素晴らしくても、SNSでの発信や拡散、購入導線にまだ伸びしろがあるケースは少なくない。購入はオフライン中心だったり、オンラインでも情報の更新に手間がかかったりすることもある。長年続いた日本の文化を、次の世代へつないでいきたい。
兵庫県は5つの国からできていて、多様な文化がある。田舎になるほど埋もれやすいそれらに、SNSの可能性を今一番感じているという。SNSの拡散力を活かして地域の良いものを届け、発信だけでなく、購入や問い合わせにつながる導線づくりまで含めて、地域事業者を支援していきたい。
ここっと兵庫とは何者か
兵庫県のお出かけ・グルメ・イベント・穴場情報を、約3年半発信し続けている発信者。2026年10月時点で、Instagramは約18万人、TikTokは約6万人、全媒体の合計は24万人を超える。緑のズボンと白いシャツの後ろ姿で活動し、企業・自治体向けのSNSセミナーやコンサルティング、ラジオ関西Podcastでの配信、地域の当事者のアカウントプロデュースにも取り組んでいる。
足を運ぶたびに深まった地元への愛着を原動力に、いまは「地方を盛り上げたい」という想いを、活動の広がりへとつなげている。兵庫で足を運び、見つけ、伝えてきた経験を、これからは地方に眠る文化や事業者の魅力を届けるために広げていく。ここっと兵庫の挑戦は、次の段階へ進もうとしている。

