「地域がなんとなく良くなった」を目指して
祖父の豆腐屋が消えた原体験を胸に、27歳の代表取締役CEO・関春樹が率いる想結びは、社会性と収益性を両輪で回す『ローカルゼブラ』として全国の地域課題に挑む。育児・介護で立ち止まった人材も巻き込み、地域の価値を再編集・再開発できるプロデューサー集団を目指す。
関春樹氏について

関春樹(せき・はるき)、27歳。株式会社想結びの代表取締役CEOとして、共同代表である代表取締役COOの西尾創平氏とともに会社を率いる設立3年目のローカルスタートアップだ。埼玉・新潟・愛媛など全国各地の地域課題に向き合いながら、「“地域”の想いを紡ぎ、次世代のバトンとなる」というミッションのもと、まちづくりの現場を走り続けている。
関氏が大切にしているのは、「地域がなんとなく良くなった」と言ってもらえる世界線をつくること。 自分たちが関われるのは一部でいい——水面に落ちた水滴が波紋を広げ、波が重なり合うことで、街が少しずつ良くなっていく。その静かな確信が、すべての活動の根っこにある。
原点
祖父は、ラッパを鳴らしながら自転車で豆腐を売り歩く人だった。
街の人たちはそのラッパの音で時間を知るほど、祖父の存在は地域の生活に溶け込んでいた。しかし、豆腐屋を継ぐ人はいなかった。やがて、あのラッパの音は街から消えていった。
街に根ざした文化や習慣が、こんなにもあっさりと消えてしまう——その体験が、関氏の地方創生への思いの源流にある。
20歳のとき、茨城県で学生起業を経験した。仲間と立ち上げたイベント事業だったがコロナ禍が直撃し、メンバーはちりぢりになったと関氏は振り返る。
その後、経営を学ぶために税理士法人へ入社。同法人で事業責任者まで務めた。
「でも自分自身は社長になりたいのがゴールではなくて、自分自身が楽しいとか、自分の目の前にいる方が喜んでいただける環境を作りたいんだということに最終的には気づいたんです」と関氏は語る。
その後前職の代表に相談し、後押しを受けて退職。株式会社想結びを立ち上げた。
いま、挑んでいること
想結びの事業は4つの柱で構成されている。
リージョン
地域特化型のビジネス。埼玉県ではスマートスクールシティというまちづくりプロジェクトや、ラグビーを活かしたまちづくりの企画を進める。新潟県妙高市では社員を地域おこし協力隊の仕組みで派遣し、地域の魅力発信を担う。愛媛県では、県からの委託事業『つながる愛媛』として、地域の魅力と学生をマッチングし、UターンやIターンを促進している。
コラボ
自社が持たないナレッジを持つ企業との協業。インバウンド施策に強みを持つ企業や、Z世代マーケットに強みを持つ企業と連携し、まちづくりに活かしている。
サポート
人材不足・資金不足のプロジェクトに対し、経営層から現場まで幅広い人材をBPOとして提供するもの。
ソーシャル
Civic Compass Forumと学生団体Civic Compass Youthを運営する。
Civic Compassは想結びが作った造語で、『地域の羅針盤』を意味する。シビックプライド(地域を愛する力・地域の誇り)とプレイスプロモーション(地域の魅力の発信)が重なり合うことで、地域のあるべき方向が示されるという考え方だ。

想結びが掲げるのは「ローカルゼブラ」という企業像だ。社会性と収益性を両輪で回し、地域課題解決型のビジネスモデルであることを絶対条件とする。
「僕が楽しいからやってるんですよ。答えなきものに取り組んでいくことがとにかく楽しくて仕方ない」
AIが発展する時代にあっても、地域の現場で答えのない課題に向き合う仕事は、人間にしかできない領域だと関氏は言う。自身もAIパートナーを動かしながら、人とAIの掛け算で可能性を広げている。
「諦めていた人」でも再び輝ける場所
想結びのメンバーはほとんどが在宅で働く。その背景には、育児や介護で一度立ち止まらざるを得なかった人たちの力を引き出したいという思いがある。
「育児だったりとか介護だったりとかで働きにくい方々でも頑張りたいという思いがあって、能力の高い方っていうのもやっぱりいるわけで、そういった人たちを巻き込んでやっていけたら思いました」
メンバーのAさんは、3人目の出産後に想結びに加わった。そしてさまざまな仕事をこなすうちに、やりたいことを再び見つけることができたと話してくれた。現在は正社員として、コラボ事業の仕事を担当している。
メンバーに求める条件として関氏が挙げるのは3つ。自発性、論理的思考、そして仲間と協力しながら、足し算でなく掛け算で成果を出す『他力力』(他人の力をうまく活用することのできる力)だ。
支援事例:秋田県の企業
秋田県のある企業は、独自のビジネスモデルを展開する。新卒採用を本格化させる中で、「一緒に盛り上げていける人材が欲しい」という思いがあった。
想結びは、学生を集めた事業構築ワークショップを設計・実施した。
これから描く未来
関氏が設定している目標は明確だ。それは、地域の価値を再編集・再開発できるプロデューサー集団をつくること。 その足がかりとして、新潟県妙高市を中心に、まちづくりの先行事例をつくっていく予定だ。
「Z世代の中で最先端の街づくりをする会社になりたいという思いもあります」
中心に置くのは、15歳から24歳の若者たち。思いとワクワクを持った若者が中心に立つことで、どんな世界線が描かれるか——その可能性に賭けている。
関氏が一貫して持ち続けているのは、「自分のワクワクと向き合う」という姿勢と、「人の思いを最大限に応援する」という信念だ。街の習慣が消えてほしくないという祖父への記憶が、いま全国のローカルへの行動として広がっている。

活動をもっと知る
株式会社想結びの活動や事業の詳細は、公式サイトおよびSNSから確認できる。Civic Compass Forumへの参加や、まちづくりに関わりたい人材の問い合わせも、公式チャンネルから受け付けている。
「現状を変えたいと思っている企業・地域」「やりたいことはあるが、まだチャンスをつかめていない若者や学生」「育児・介護などで制限がある中でも諦めたくない人」——そうした人たちに向けて、想結びは扉を開いている。

